[メモ]音楽の現場はどこにある?

 昨日Back To Chill(BTC)というイベントにいった。ドラムンベースと2ステップの鬼っ子、ダブステップをメインに掲げた代官山Saloonで開催されるイベント。低域がものすごい轟音で響き、その混沌の中に奇怪なメロディやシャープなハットが織り込まれる。隣に座った人の声も聞き取れない低音。気持ち良さと気持ち悪さの境界線スレスレを飛行するナイスなイベント。
 で、そこで知ってる曲がかかった。よくiPodで聞いてる曲。当然のことながら聞こえ方がまったく違う。別曲かと思うくらいのド低音の響き。音の螺旋に揉まれながらぼんやり「音楽の現場ってどこにあるんだろうな」ということをつらつらと考える。
 iPodで電車の中で聞いてる音楽、クラブで爆音で聞いてる音楽。どっちが上、っていうことはないよな。でもクラブ・ミュージックというのはクラブの爆音の中で機能し進化する音楽であることは確か。
 BTCにも出演しているDJ百窓というDJがいる。彼はリリースを頑なにこばみ、自分のトラックを自分のDJでかけるためだけに制作を続けている。その音も、姿勢も、図太くカッコいい。自分の音楽の現場がどこにあるのかを素手で掴み取っている。
 一方で思うのは、いまの音楽の聴く現場って、すっかりホーム・ステレオやクラブやライブハウスではなくて、iPodなんかでヘッドフォンで聞くというのがほとんどなんじゃないか。いわゆる「音楽」というものはもちろん演奏から始まったわけだが、それが録音芸術を経て今のデジタル技術の波の中で「音楽」はヘッドフォンの中にあるんじゃないか。そういうことを前提としなくちゃ今の音楽についての批評なんてできないじゃないか。ステレオラブが昔「ステレオ・ヘッドフォン・マインド」っていう曲を出したが(すごくカッコいい曲だった)、要するにそういうこと。「音楽2.0」と言ってみたりしてね。
 ニコニコ動画を利用して、ひたすら自作曲をアップし続ける猛者もいる。完璧に場の空気を読んだ作曲をし、ニコニコ動画リスナーを喜ばせるために音楽を作り続ける。これはこれで、クラブがシカゴやニューヨークで発展したのと一緒の文化だよね。ここにも音楽の現場がある。
 この話は散漫なままで結論はないんだけど、要するに音楽がどんどん拡散していってる。それぞれの現場でそれぞれのクリエーションが爆発している。いいことだ。もっと滅茶苦茶になれ。もっと支離滅裂にしろ。批評が追いつかないスピードで発展せよ。楽しけりゃなんでもいいんだ。